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東京高等裁判所 昭和34年(う)534号 判決 1961年12月14日

被告人 三島静江

主文

原判決を破棄する。

被告人を罰金五万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

原審並びに当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

右(近藤)弁護人の控訴の趣意第一点について。

所論は、原判決は本件被告人の所為が刑法第二百三十条の二第一項に該当し、その事実の真実なることが証明された場合であるから処罰されないとの被告人及び弁護人の主張を排斥した点において事実を誤認した違法がある。すなわち、原判決は、その事実の真否に関する判断において、被告人の直接経験したところは何もない、他からの噂さ、伝聞に基く推断に過ぎぬ、噂さ、風聞に止る程度のものを主として利害関係者のうち一方的な立場の者からのみ間接に聞知したに過ぎぬ、直接関係者に確めておらぬ、利害の反する側にも当つてみることをせぬ、不確実な漠然たる世間の噂さ、風聞に結びつけその儘汚職行為ありと飛躍推断したに過ぎぬと判示しているけれども、少くとも二千万円以上の金が費消されていることは宮川竹馬、海原清平、天野富太(控訴趣意書に天野富太郎とあるのは誤記と認める。)の各証言並びに宮川竹馬刊行のパンフレツトにより一点疑う余地のない厳然たる事実であり、原判決はこの点を無視し、何ら考慮していない。若しこの事実を重視し、正しく認識するならば、原判示のように単に「噂さ、風聞」とか、「不確実な漠然たる世間の噂さ、風聞に過ぎぬ」とはいえぬ筈である。また、原判決は汚職の事実は証明が足りない、被告人の確信には被告人自身に過失があるというけれども、保全、造船と並び称せられた電力復元事件が幸か不幸か不発に終つて司直の手を煩わさなかつたからといつて汚職の事実は消すことはできぬ、すなわち、事実は厳として存在していたのである、と主張する。よつて按ずるに、被告人が原判示のごとき文書を発売頒布し又は貼布した事実は記録上明白であつて、その所為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図るに出たものであることは原判示のごとくこれを窺うに足り、殊に本件各被害者はいずれも公務員であるから前同条第三項によつても当然事実の真否につき判断すべき場合であり、真実なることの証明があつたときは処罰することができないことはいうまでもないところである。そこで、先ず原判示第一の(一)の事実につき審究するに昭和二十九年三月二十二日付発行の新聞国会通信第七十八号紙第一面に「又も出るか電気復元法案、必死に躍る利権政治屋」と題し、富山県知事高辻武邦、鍛冶良作、土倉宗明、福田一、西村直己、浜田幸雄及び相川勝六らの氏名を列挙した上、原判示のごとき記事を掲載し、発電設備復元法案については一団の利権政治屋が積極的に工作を進めており、同法案が提案されても通過の見込が全くないのにも拘らずあくまで之を議員立法でデツチ上げようとしている裏には造船、保全疑獄以上の醜悪な取引がひそんでいるといわれる旨単に噂さ、風聞に過ぎない事実を前提とし、法案をめぐる利権屋の恥知らずには驚かざるを得ないとし、更に執拗な提案運動が止まないのはこれまでこの問題にかじりついて私腹を肥していた関係上今におよんで手を引くことができない事情があるためと断じ、この利権政治屋群に対していずれ検察庁がメスを入れることは明らかであり、その時こそ政界ボスの醜い正体がはつきり暴露するであろうと推断を下している点に徴すれば、まさに原判示のごとく、富山県知事高辻武邦及び鍛冶良作以下の各被害者が復元法案の国会提案及びその通過の運動に熱心なることを捉えてこれに不確実な漠然たる世間の噂さ、風聞を結びつけてその儘汚職行為ありと飛躍推断したに過ぎぬものというべく、その他前記原判示の記事によれば、復元を議員立法によつて今会期中に実現しようとする運動の中心は前記鍛冶良作以下土倉宗明、西村直己、福田一等の現議員と落選組の神田博、中村純一等であり、これが急速に活気づいたのは、これまで富山県高辻知事をめぐる資金関係から新たに発展して住友化学工業株式会社以下八社が土井正治を通じて大口運動資金を流したためであるといわれる、富山県高辻知事が約二千五百万円を県費から流用した他に住友化学等八社からも運動資金が出ていたものであるが、今度は更めて莫大なものが流された模様で、億以上の金が前記利権政治屋を通じ議員立法の工作資金として通産委員、経済安定委員にバラまかれるものと予想され、最も注目すべき点として同法案の提案者及び署名委員には一人頭三百万円ということで取引が行われていると伝えられている、今度復元運動の正面に飛出して来たのが西村直己であり、この利権運動の参謀長は西村であろうといわれ、住友財閥との下工作をしたのも西村で、今後西村を中心として猛運動が進められるだろうと予想されている等と前同様単なる噂さ、風聞に基いてその儘本件被害者らの公職者に汚職行為ありと飛躍推断しているものと認められるのみならず、右記事中に摘示された富山県知事高辻武邦、鍛冶良作、土倉宗明、福田一、西村直己、浜田幸雄及び相川勝六らが発電設備復元法案をめぐつて造船、保全疑獄以上の醜悪な汚職行為に出た事実、高辻富山県知事が約二千五百万円を県費から流用した事実、住友化学等八社からの莫大な大口運動資金が鍛冶良作以下の者らを通じて議員立法の工作資金として同法案の提案者及び署名委員らに一人頭三百万円ということで取引が行われたとの事実については記録を精査検討し、当審における弁護人申請にかかる全立証を参酌しても、到底これを確認し難いところである。弁護人は、この点に関し、少くとも二千万円以上の金が費消されていることは宮川竹馬、海原清平、天野富太(天野富太郎とあるのは誤記と認める。)の各証言並びに宮川竹馬刊行のパンフレツトにより一点疑う余地のない厳然たる事実である、と主張するけれども、右各証言及びパンフレツトの記載のこの点に関する部分は原審並びに当審証人高辻武邦、同小又幸井、同福田一の各供述及び原審証人高辻武邦の証言中に引用された電気復元関係経費調と題する書面に照したやすく措信し難いところであり、殊に右電気復元関係経費調によれば富山県において昭和二十四年度より昭和二十八年度に至る五年間に電気復元関係費用として支出した県費の総計は約八百九十三万六千余円に過ぎないことが認められるのであり、しかもその金員は県庁職員の旅費、食糧費、通信費その他の必要経費であり、適法に支出されていたものであることが明らかであり、しかも当時富山県においては電力復元の運動は県議会議員全員一致の決議により推進せられていたものであることは当審における証人高田信一、同岡本義久に対する尋問の結果によりこれを認め得るところであるから、所論のごとく、高辻知事においてほしいままに県費を流用費消したものとは到底認め難いところである。したがつて、原判決が被告人の所為につきその真実性の証明が十分でないとして被告人及び弁護人の主張を排斥したことについては何ら事実を誤認した点は存しないものといわなければならない。次に原判示第一の(二)の事実につき按ずるに、昭和二十九年五月十日付発行の新聞国会通信第八十三号紙第一面に「電気復元をめぐる不正を処断せよ」と題し、「高辻知事以下の汚職を告発する」と附記し、その記事中に「告発状の要旨」という見出の下に、「高辻は民選知事当選以来二期六年間にわたつて復元運動の先頭に立つているのであるが、これが専ら県民の利益を名目とする金もうけ仕事に過ぎないことは今や明白である。」「高辻が到底不可能といわれる電気復元を可能であるかのごとくいいふらして中央政界に工作するために費消した県費はすでに二千数百万円に上るといわれ、その使途に関しては多大の疑惑がもたれている。」「高辻が国会工作のために東京に出張するに当つてはさながら大名旅行の如く、その東京における行動も大名生活というべきものでぜいを尽し、県費を乱用している。」「高辻は一面において県民の汗と血によつて納められた税金を流用し、一面において自家発電資本家の提供する政治資金を用い、無理の多い電気復元法案の国会提出のために金権政治的策動を続けて来た。」旨高辻武邦の名誉を毀損すべき記事を掲載しているのであるが、富山県において電気復元関係の費用として昭和二十四年度より昭和二十八年度までの五年間に支出した県費の合計が八百九十三万六千余円に過ぎないこと及び当時富山県においては電力復元運動は県議会議員全員一致の決議により推進せられていたものであることは前記認定のとおりであつて、しかもその支出費目も明らかであり、同人が中央政界に工作するために二千数百万円の県費を消費し、かつその使途に関して多大の疑惑がもたれているというがごときことは記録上到底認め難いところであり、その他前記摘示事実については記録上何らこれを認むべき証明はなされていないのであるから、被告人としてはその刑責を免れないものといわなければならない。次に原判示第一の(三)の事実につき按ずるに、原判示新聞第八十四号紙第四面の記事中富山県知事高辻武邦が電力復元運動で血税を吸つたとの事実については前説示のとおり本件記録を精査し、弁護人の全立証を検討してもいまだこれを認め難いところであり、その証明がないものといわなければならない。次に原判示第一の(四)の事実について按ずるに、原判示新聞第百二十九号紙第一面及び第二面の記事は、要するに、鍛冶良作については、同人は復元汚職に暗躍し、高辻富山県知事の子分として復元法案をかつぎまわり、高辻親分のために奮斗し、高辻知事の公費乱用で汚職問題が火をふきはじめると、あわててくさいものにふたをする役割でかけ廻つたりし、また高辻知事と利権政治屋グループを築地の待合に談合させたりしたといわれ、彼らのなす復元運動とは実は金をめあてとした利権運動以外の何ものでもない、というにあり、また高辻武邦については、同人は富山県知事として復元運動で公費を乱用し、血税を吸い、県の利益のためという建前を利用して県費を乱用し豊富な政治資金をバラまくことによつてこれを自己の選挙運動に利用すると同時に私腹を肥しており、汚職の疑は十分であり、その目的は金もうけ仕事に過ぎないことは明白である、同人の費消した県費はすでに二千数百万に上るといわれ、その具体的使途に関しては多大の疑惑がもたれており、知事二期戦に出馬の選挙費用に流用されているなどの点も富山県議会で指摘されている。又同人が国会工作のため東京に出張するに当つてはさながら大名旅行のごとく、その東京における行動も大名生活のぜいを尽し、金に糸目をつけぬ政治工作によつて一部政治資金にうえた国会議員を操縦した、この場合高辻は復元運動の中心人物として自家発電資本家の運動資金が同人の手を通じて国会議員にバラまかれた疑は濃く、汚職の媒介者たる責任をもつものであるというにあるのであるが、本件において高辻武邦が富山県知事として所論電気設備復元運動に関し昭和二十四年度より同二十八年度までの五年間に支出した県費は合計八百九十三万六千余円に過ぎず、その費目も明白であつて、同人が公費を乱用し、血税を吸い私腹を肥した事実の認め難いことは前記認定のとおりであり、したがつて、同人がこれにより知事第二期戦に出馬の選挙費用に流用したというがごとき、また同人の東京に出張する際並びに東京滞在中の生活が大名旅行のごとくぜいを尽したというがごときことは到底認め難いところであり、被告人側の全立証によるも、何らこの点を肯認すべき資料は存しない。また、高辻武邦が自家発電資本家の運動資金を国会議員に提供した贈賄の嫌疑が濃厚であるとの点についても何らこれを認むべき資料は存しない。したがつて、鍛冶良作についても、同人が復元汚職に暗躍し、高辻知事の公費乱用で汚職問題が火をふきはじめるとあわててくさいものにふたをする役割でかけ廻つたというがごときことは記録上認め難いところであり、被告人側の全立証によるもこの点につきその真実なることの証明があつたものということはできない。次に、原判示第一の(五)の事実につき按ずるに、原判示新聞第百五十一号紙第一面の記事は、要するに、高辻武邦については、同人の復元運動が事実上消減したにひとしい状態になつても、あらゆる手段を尽して一握の国会議員と策謀し、復元法案の国会提案工作をやめなかつたのは、同人が県の利益のためという建前を利用して県費を乱用し、豊富な政治資金をバラまくことによつて復元運動を継続し、これを自己の選挙運動に利用すると同時に私腹を肥していたためであり、また自家発電資本家の政治資金が高辻の手を通じてバラまかれた疑は濃く、汚職の媒介者たる責任は免れないとし、司直の疑惑の焦点となつているというのであるが、右のごとき事実の認め難いことは原判示第一の(四)について説示したとおりであり、また、鍛冶良作については、同人は自由党某総務に「高辻から相当の資金をもつてくるが、何とか総務会で復元を承認してもらうよう努力してくれないか」と相談した事実もあつて、彼等の運動の根底にあるものが専ら金であることははつきりしている、というのであるが、鍛冶良作が自由党某総務に対し右の記事にあるがごとき相談をもちかけたことについては記録を精査し、当審における事実取調の結果に徴してもこれを認め難いところであり、また同人の運動の根底にあるものが専ら金であるとなすべき根拠も不確実な世間の噂、風聞を除いては何ら見当らないところである。次に原判示第二の事実につき按ずるに、原判決は、被告人が原判示第一の(三)掲記の写真同様のポスター、すなわち、「醜悪利権政治屋は躍る」と題し、昭和電工株式会社外六社の名を掲げ、電気設備復元法案の議員立法による買収費が五千万円右記の資本家からバラまかれている? 汚職議員を国会から放遂しよう。復元運動で血税吸つた富山県知事告発されんとの記事及び富山県知事高辻武邦の似顔漫画入りの国会通信別刷八号のポスター及び「!!保全、造船以上の醜悪!! 電気復元法案に躍る利権政治屋を斬る」と題し、○第十三国会以来利権政治屋が持ち廻つている電気復元法案とは何か ○この法案にダニの如く喰いついて血税を吸う利権政治屋と汚職官公吏の正体 ○この利権法案を悪評の議員立法で実現せんとする利権政治屋の名は? 鍛冶良作、土倉宗明、福田一、西村直己との記事入りの国会通信別刷八号のポスター各多数を東京都内国会議事堂附近その他の路傍塀等に貼布した事実を摘示しているのであるから、被告人の所為が公然事実を摘示して右高辻武邦、鍛冶良作、土倉宗明、福田一及び西村直己の各名誉を毀損すべきものであることは疑をいれないところであり、右の事実の真実性については記録を精査検討してもこれを認め難く、この点に関する証明はないものといわなければならない。次に、原判示第三の事実につき案ずるに、原判決が原判示月刊雑誌国会通信第七号第三十五頁以下に掲載された「奈半利川問題の真相を衝く」と題する記事中浜田幸雄の名誉を毀損すべきものとして掲げた部分は、要するに利権屋根性の持主たる川村知事の利権漁りのための自由党入党工作に際し、吉田首相は利権の山分けという好餌にもかかわらず、テンから相手にしなかつたが、自由党議員たる浜田幸雄は右のごとき川村知事に丸め込まれたというに帰し、右は公然事実を摘示して浜田幸雄の名誉を毀損すべきものというべく、右のごとき事実は記録上認め難いところであつて、その真実なることの証明なき本件においては被告人はその罪責を免れないものといわなければならない。なお、被告人において仮りに以上の事実をすべて真実なりと確信していたとしても、原判決説示のとおりその確信には被告人自身に過失があるものというの外はなく、もとより本件につき犯意を阻却すべき場合にはあたらないものというべく、結局所論は採用し難い。論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は、原判決はその証拠の判断に不備がある。すなわち、原判決挙示の福田一の証言と宮川竹馬の証言とは同一事項(二千万円の問題)につき全く相反しているにかかわらず、原判決はこれについて何らの判断を示していない。また原審証人海原清平同天野富太(控訴趣意書に天野富太郎とあるのは誤記と認める。)らの証言は全く判断の資料に供されていないのは審理不尽、理由不備といわざるを得ない。その他原判決は単に証人の氏名を列記するのみで被告人に不利な証言と有利な証言とを明らかにしていない、と主張するけれども、有罪の判決の言渡をするには罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示せば足り、一々その判断のよつて来る所以を説明することを要しないことは刑事訴訟法第三百三十五条の法意に照し明らかなところであるのみならず、記録を精査検討すれば、所論原審証人海原清平、同天野富太の各供述についても原審はもとよりこれを判断の資料に供していることは疑のないところであり、(その判断の結果を判決に表示することを要しないことは前記のとおりである。)また所論福田一の証言と同宮川竹馬の証言とが同一事項に関し全く相反していることは所論のとおりであるが、このことは同事項に関する被告人の真実性の証明が十分でないことを表示するものというべく、これがために原判決の証拠判断に不備があり、原判決に理由不備の違法があるものとなすことはできない。ひつきよう、論旨は理由がない。

同第三点について。

論旨は、原審の量刑不当を主張するものである。よつて、所論にかんがみ本件記録に現われた被告人の経歴、境遇、本件犯行の動機態様、罪質、犯罪後の情状その他一切の事情を考慮するならば、被告人はもと社会党右派の機関紙「社会新報」の記者であつたが、昭和二十六年独立して週刊(当初は旬刊)新聞「国会通信」を創刊し、その後月刊雑誌「国会通信」をも刊行し、今日に至つたものであり、右「国会通信」は国会を中心とする政治情報を伝達することを主たる目的とするものであり、その読者の大部分は中央政界の人達であり、その発行部数も左程多くはなく、読者層も限られているのみならず、本件事実関係はいわゆる公共の利害に関する事項であり、その取材に当つては万全の注意と慎重な検討とを怠つたとはいえ、被告人としては公憤の余り専ら公益の目的で本件新聞、雑誌及びポスター等を発行して頒布し又は路傍に貼布したものと認められ、かつその間に他意なきものと認められるのであり、被告人の犯罪後の情状その他一切の事情に徴すれば原審の量刑は現在においてはやや重きに過ぎるものというべく、結局本論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄すべきものとする。

そこで、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十一条に則り原判決を破棄し、同法第四百条但書に則り当裁判所において直ちに判決すべきものとする。原審が証拠により認めた事実を法律に照すと、被告人の原判示各所為はいずれも刑法第二百三十条第一項、罰金等臨時措置法第二条、第三条に各該当するところ、原判示第一の(一)の鍛冶良作、土倉宗明、西村直己、福田一、相川勝六、浜田幸雄及び高辻武邦に対する各名誉毀損の所為、同第一の(四)、(五)の鍛冶良作及び高辻武邦に対する各名誉毀損の所為及び同第二の高辻武邦、鍛冶良作、土倉宗明、福田一及び西村直己に対する各名誉毀損の所為はそれぞれ一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五十四条第一項前段、第十条によりそれぞれ犯情の最も重いと認める原判示第一の(一)については西村直己、同第一の(四)については鍛冶良作、同第一の(五)については高辻武邦、同第二については土倉宗明に対する各名誉毀損の罪の刑に従い処断すべく、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、同法第四十八条第二項により各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内において被告人を罰金五万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法第十八条により金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべきものとし、なお原審並びに当審における訴訟費用については、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に則り全部これを被告人に負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂井改造 山本長次 荒川省三)

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